アニメーション映画『ふりふら』島﨑信長さんが語る共感ポイントとは?「みんなそれぞれすごく“いそう”なんです」【インタビュー前編】
Thursday 12:00
『ストロボ・エッジ』『アオハライド』の原作者・咲坂伊緒先生の最新作で、実写とアニメーションW映画化となる『思い、思われ、ふり、ふられ(ふりふら)』。
アニメーション映画が2020年9月18日(金)に公開されることを受け、山本理央役・島﨑信長さんにインタビューをさせていただきました!
前編では、島﨑さんに語っていただいたキャラクターに対する思いや『ふりふら』の魅力をたっぷりお届けします♪
※映画の内容に触れる記事となっておりますので、ネタバレにはご注意ください。
理央という等身大の男の子
どんなことを考えながら理央を演じられましたか?
僕は、理央ってとってもわかりやすい人だと思っています。作中では最初王子様って言われていたり、一見クールで格好良く見えたりするんですけど、別に彼はクールに振る舞っていたわけでも、格好つけていたわけでもなくて。
むしろいろんなことが上手くいかなくて燻っていたり、他の人にあんまり興味がなかったりしていたのが、たまたまクールに見えたり、興味がないからこそ自然に振る舞えるのが格好良く見えたりしていただけなんです。
最初は「俺こっち」って由奈ちゃんのほっぺたを触って振り向かせて平然としていたくせに、それが由奈ちゃんを意識し出した途端に、ちょっとしたことですぐ照れるし、ドキドキしちゃうし。
あんなに素で振る舞っていたのが格好良かった子が、由奈ちゃんに格好良く見せたいって欲が出たり、王子様ルックは格好悪くて見せるのが恥ずかしいと思ったりしてくるんですよね。
燻って陰っていた彼の本来持っている真っ直ぐでかわいらしくて男らしいところが、扉を開くようにどんどん晴れていって、等身大の彼が出てくるのが僕は好きですね。彼の成長や変化をとってもわかりやすく描いていただいているので、皆さんにもそれを感じてもらえるんじゃないかなと思います。
僕個人も、わりと“最終的に真っ直ぐ派”なんですよね。由奈ちゃんと理央が特にそうで、2人ともちゃんといろいろ考えてる子なんだけど、「最後はもう自分の気持ちで突っ走っちゃう」みたいな。
自分の本当の気持ちに気づいて、吾妻に筋を通すために“言いに行かなきゃ!”って理央が突っ走るところもそう。朱里ちゃんとかは1回考えると思うんですよ、それを言われた吾妻はどう思うかなとか。
でも理央の突っ走るあの感じがすごくわかる!僕もいろいろ考えるけど、最後の最後に気持ちで動いちゃうから、理央とのその辺の相性はいいのかなと思いますね。
理央は物語の前半と後半で変化のあるキャラクターですが、演じるときに気をつけたことはありますか?
黒柳監督が最初に、「本当に生きている・生活している・そこにいるように感じるものを描きたい」と仰っていて、それは僕も常々思っていることなんです。
漫画やアニメのキャラクターではあるんですけど、でもちゃんとそこに生きている人間で、いろんな面があって。しかも『ふりふら』の子たちは思春期の青少年だから、ちょっとしたことで変化が生まれる。
理央にとっても、闇に包まれた世界を救ったとか、世界が爆発したとか、そういう壮大なことが起こってるわけじゃないじゃないですか。でも思春期で当たり前に経験するようなことで、人ってこれだけ大きく変わるんだよっていうことも、とても人間らしいなと思っていて。
なので、原作や映像・台本で理央の変化や思いなどの情報を取り入れつつも、あんまり頭で考えてイメージは固めずに、マイク前では意識し過ぎないようにしていました。お芝居って掛け合いなので、変に狙ってこういう言い方をしようとかはせず、その場の空気感から受け取ったもので演じましたね。
『ふりふら』は共感出来る点ばかり
理央と和臣はタイプが違うキャラクターですが、島﨑さんの中でどちらが自分に近いと思いますか?
僕は結構、和臣もストレートな人間だと思ってるんですよ。和臣視点じゃなくて読者目線だと、「なんで急に離れたりくっついたりするんだろう」って思ったりするかもしれないんですけど、全部がわかった後で彼を紐解いていくと、彼も実はとっても素直で真っ直ぐな人。
ここ!って決めたらそれしか見えなくなっちゃうこともあるけど、朱里ちゃんと一緒で、それでもやっぱり周りのことも考えちゃう大人な部分を持ってるなと思います。視野がちょっと広いだけで、基本はストレートなんですよね。
後、『ふりふら』のキャラクターはみんなそれぞれすごく“いそう”なんですよ。こういうこと思ったりするよね〜って、どのキャラクターにもとっても共感出来るところがあると思うんです。
だから僕も、「自分の友達の好きになった人を好きになっちゃいけない」っていう気遣いを持っちゃう和臣のように、何か思っててもやっぱり周りを気にしちゃったりします。
あとは、和臣の夢を追う姿!そこはすごく共感ポイントです。自分の目指す夢を楽しそうに話したり、自分の好きなものにクリエイターとして関わりたいって言ったりしていたところは、逆に理央よりも共感出来るなと思うので、僕が和臣を演じるとなったらまた「和臣とめっちゃ親和性ありますね」って言うと思うんですよ、その子のことをより見つめるから。
どのキャラクターにもそう思えるのが『ふりふら』のすごいところなのかなって思います。でも、自分が理央っぽいところはすごくあるなと思います(笑)。
大人はどっちかっていうと、朱里ちゃんの気持ちがわかるだろうなあと思います。周りを気にしちゃっていろんなことが出来ないところもそうだし、由奈ちゃんは「好きです、私のこと振ってください」って言えるんだけど、朱里ちゃんが「私のこと好きですよね?」って相手に言わせるのは、あれは予防線なんですよね。
社会人だとそういうことあると思うんですよ。はっきり言うわけにもいかないからふわっと匂わせるけど、「これはアリなのか?ナシなのか?」「ここで振られるとこの後気まずいし、直接は言えないな…」みたいなところは、朱里ちゃんに通ずるものがあると思うんですよね。
一番最初に作品に触れた際に、自分が共感出来るなと思った場面はありますか?
やっぱり和臣の夢かな。僕は今好きなことをやらせてもらっているけれど、運良く好きなことを仕事に出来た人間なので、和臣の“言うなればちょっと映画オタク”な部分が共感出来ますね。自分も好きだから作ってみたいっていう気持ちもあるし、僕もアニメ・漫画・ゲームなどの声優さんが関わることって大好きだし。
恋愛部分じゃなくなっちゃうんですけど、僕の中の一番の共感ポイントは“夢”ですかね。『ふりふら』は恋愛だけじゃなくて、夢だったり家庭環境だったり友情だったり、本当に青春のいろんなものが作品の中にぎゅっと詰まってるなって思います。
もし登場人物たちと同じような学生時代のときに作品に触れたとしても、和臣のほうに共感しますか?
あ〜〜〜、だったら多分「由奈ちゃんや朱里ちゃんみたいな子と俺も青春してえなあ」って思いますね!「こんなかわいい子とときめきてえなあ」って!(笑)まず共学に憧れていると思いますね、僕は男子校だったので余計に。
部活のマネージャーとかも憧れますよね、男しかいなかったんで。多分僕はそっちに目が行きますね(笑)。それはそれで楽しいんですけどね!
多分高校のときの僕が見たら「恋愛してえなあ〜!」って思いますし、「由奈ちゃんかわいいなあ〜!めっちゃ表情豊かや!めっちゃええ子や!こんな子に真っ直ぐ思われてみたい!」って思ったと思いますね。
映画内ではキャラクターの様々な性格や価値観が描かれましたが、誰の“考え方”に一番共感しましたか?
僕は結構間をとるタイプで、その場その場で考え方って変わるよねっていうのが信条のひとつなんです。昨日言ってたことと真逆のことを今日言っててもおかしくないし、お酒が入ったら違うこと言い出したりするのが人間だなと思っていて、そういう意味で言うと、共感することばっかりです。
正反対なのが、「自分から動かないの?」って言ってた朱里ちゃんが、自分から好きだとは言わないで「私のこと好きですよね?」って相手に言わせようとするところと、「王子様が現れるのを待つ」って言ってた由奈ちゃんが、自分から、しかも振られるってわかった上で「好きです、振ってください」って言って気持ちを伝えるところ。
言ってたことと逆になってるなってことが発生してるんですけど、それを見て僕がどう思ったかっていうと、「どっちもわかる」なんですよね。「断られたらそれを受け止めるしかないし、今後も友達でいられるかわかんないじゃん!」っていう気持ちもわかるし、「振られてもいいからちゃんと気持ちを伝えよう」っていうのもとてもよくわかる。
みんなとっても人間的な悩みを抱えて人間的な行動・言動をするので、どれというわけじゃなく、共感ポイントばっかりなんですよ。みんなもきっとそうなんじゃないかな。
もちろん大人になったから今は視野も広がってるし、役として関わってるから考え方や作品の読み方は深いとは思うんですけど、でも僕は昔からわりとそういうタイプですね。「悪にも悪の事情があるよね」ってフラットに考えます。
いろんな創作物に昔から触れてきているので、どっちか一方が悪いとかはあんまり決めつけはしない人生だったかもしれないですね。単に優柔不断なのかもしれないですけど、今はやっぱりこういう人間のことを考える仕事をしてるから、余計にそう思います。
本作は、由奈と理央が出会うシーンをはじめ“ピュア”と“リアル”というキーワードが大事な作品だと思いますが、演じた上での印象を教えてください。
由奈ちゃんみたいな乙女チックな子が「王子様みたい」って思ってしまうほど、キラキラ〜っていう演出で出てきた直後に「うんこ」発言ですからね(笑)。
「うんこって言った!少女漫画の王子様ってうんこって言うんだ!!」みたいなのが、一気にみんなを惹きつけるんですよね。そこのギャップがリアリティをとても感じる。ね、アイドルだって……いや、やめとこう!(笑)
でも、とっても上手いなって思いました。そういうところが『ふりふら』にはいっぱいあるんですよね。少女漫画らしい演出もいっぱいあるんですけど、リアルなところもいっぱいあるので、咲坂先生すごいなって。咲坂先生の作品は読んでる人にリアリティを感じさせるからこそ、みんなの心を惹きつけるんだろうなって思います。
後編ではご自身のくすりと笑える青春エピソードや、声優としての役作りについて語っていただきましたので、公開をお楽しみに♪
作品概要
アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』
【公開日】
2020年9月18日(金)全国ロードショー
【スタッフ】
原作:咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:黒柳トシマサ
キャラクターデザイン:山下祐
脚本:吉田恵里香
美術監督:平間由香
色彩設計:安部なぎさ
CG ディレクター:野間裕介
撮影監督:岡﨑正春
編集:三嶋章紀
音楽:野見祐二
音響監督:長崎行男
アニメーション制作:A-1 Pictures
製作:アニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会
配給:東宝
【キャスト】
斉藤壮馬
潘めぐみ
鈴木毬花
井上喜久子
田中秀幸
久川綾
井上和彦
堀江瞬
佐倉綾音 ほか
※敬称略
© 2020 アニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会
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